犬に対して整体が効果を発揮するメカニズム

私は9年「犬の整体」と称して犬に整体施術を行ってきました。近年マッサージや整体と称して犬を揉む手技を取り入れている方々が増えてきていますよね。私自身、その事に心強いと感じる半面、犬に対する整体施術というものがリラクゼーションや、はたまた魔法のようなものだと誤解している人が増えているのでは、と危惧する気持ちが強くなっておりました。きちんと効果を立証できる犬の整体というものが、具体的にどのようなものなのかを正しく理解していただければ幸いです。

●ただ揉めばいい、わけではない。

犬は筋肉を揉むと歩容が改善します。場合によっては立てなかった子が歩き始めたりもします。

〚肩甲骨の歪みにより前肢が踏ん張れずに開いていってしまう状態が改善する事例〛

〚股関節を支える筋肉がこり固まってしまった結果後肢に乗れなくなっていた事例〛

当方では筋肉を”揉む”ことでこのような変化を引き起こしていますが、大事なのは「筋肉がゆるむ」ことなので”揉む”以外でも効果は出せます。(さする、温める、たたく、当然鍼灸も有効です)
ただ、このような変化を起こすには”どうほぐすか”よりも”どの筋肉をほぐすか”がとても大切なのです。犬が歩く時、立ち上がる時、座る時、どこの筋肉を使っていて、姿勢や歩容が崩れたときにどこに負担がかかりどこは使えなくなっているのか。それを理解した上で、的確に狙った筋肉を緩めることができるなら、どんな手法を使っても確実に効果を出すことは可能なのです。

●老化による筋力低下は諦めるしかないのか

一般的に犬に整体を受けさせようと考え着く流れとしては
〇シニアになって姿勢や歩容が乱れる

〇動物病院に行ってレントゲンを撮るが骨に以上は診られない。

〇関節炎なのでは、という診断が下り痛み止めを処方してもらう。

〇姿勢は改善しないのでそのまま筋力低下。歩容は崩れる一方。

〇何か他にすべはないのか、と検索。

というものが多いのですが、その間にたいていの飼い主さんは一度は「老化現象なので仕方ない」という言葉を耳にすることになります。どんな犬でも筋肉を揉めば必ず歩けるようになる。とは言いません。ですが、”老化による筋力低下”であれば、整体施術により進行を遅らせることは可能です。なぜな「筋肉をゆるめたら歩きやすくなる」ことは事実で、整体の効果にはきちんとした理論があるからです。

●揉んだら筋肉がつくわけではない

「シニアの子を揉んだら歩容が改善する。」とはいえ、筋肉を揉んだり温めたりすることで「筋肉が鍛えなおせた」わけではありません。変化の理由は「こり固まってしまい使いにくくなっていた筋肉がゆるんで使いやすくなった」からなのです。つまり、整体が効果を発揮するのはあくまでも「筋肉はまだあるけど、使いにくくなってしまっている」症状に対して。であって、筋肉が完全に落ちてしまっている子は、いくら揉んでも歩けるようにすることはできません。

しかし、老犬だからと言ってある日突然筋肉が衰えて無くなってしまうわけではありませんよね。筋肉が衰える段階には「使いにくくなる」という状態があるんです。筋肉は存在しているのに、それが使いにくくなる。という状況は、人間でいうと「足が重いと感じる」状態です。階段を登るのが億劫でエレベーターを探す。歩きたくないからタクシーを拾う。皆さんも経験したことがあると思います。
犬の体にこの変化が起きると、ボールを投げても追いかけない。飼い主が帰ってきても玄関に迎えに来ない。といった行動の変化が現れます。その変化のせいで運動量が減れば、いずれ必ず筋肉は衰えていきます。
もちろん加齢とともに「好奇心が無くなった」や「遊びたい欲求が減った」という理由もあるかもしれません。でももしお散歩を渋ったり、遊びに誘っても乗ってこなくなったりする理由が「筋肉が使いにくいから」だとしたら。そして”筋肉をほぐせばまた動き始めるかもしれない”としたら、試す価値があると私は考えるのです。
そして実際に、コリを緩めてあげるだけで、犬は自らお尻を上げて歩幅を広げるようになるんです。

前肢荷重により歪んしまった姿勢が改善し、前後肢ともに歩幅が広がる事例

こわばっていた筋肉が緩んだことで筋肉のパフォーマンスが上がり、蹴りだしが力強くなった事例

●犬の姿勢が崩れるパターン

シニア期に入った犬がこのような姿勢になりやすいですよね。


「整体施術をして姿勢を改善する」と聞くと、大抵の人は「背骨をボキボキ整えるに違いない」
と想像するようですし、実際に背骨にアプローチする手技の先生方も居るようです。
ですが、私の経験上”背骨周りをマッサージしただけでは姿勢は改善しない”ということだけは、
確実に断言できます。なぜならこのような姿勢の崩れは
「背中が理由で起こっている」わけではないからです。


具体的に姿勢が崩れるパターンを簡単に解説しますと

①後ろ足の筋力が弱まる

②前肢荷重になるために前足の位置が後ろへ引かれ、肩甲骨が立つ

③肩甲骨に引っ張られ脊椎が腹屈する

④脊椎の腹屈につられて骨盤が後屈し、お尻が下がる

⑤後肢は蹴りだしにくくなり、前肢は前に出しにくくなる。

(詳しくは次号で解説いたします。)という流れなのです。
つまり背中が丸まってしまうのは背中の問題ではなく四肢の使い方の問題、骨盤と肩甲骨の歪みの問題なのです。そしてこの歪みを発生させてしまうのは四肢を動かす筋肉の”コリ”なのです。

●「こり」とは何か

「筋肉は”縮むことしかできない”」ということを知っていますか?
私たちも犬も、骨格構造を筋肉が支えることで立ったり歩いたりできる構造になっています。
すべての関節に、その関節をまたいで”対になって”筋肉が着いています。
それらが”お互いに縮みあって”関節を動かしているんです。

ここで一番大事なことは筋肉は縮む能力しか持たない=自ら伸びることができない。という事実です。

体中のすべての筋肉をバランスよく使うのであれば何の問題もないのですが、地球の重力の中で生きていく上では、筋肉の使い方に偏りが生じてしまうのは避けがたい事なのです。

使い方が偏ってしまうことで他より多く(強く)縮み続ける筋肉が生じると、その筋肉は老化などによる柔軟性の低下により”縮んだまま固まった状態=コリ”となってしまいます。縮んで固まった筋肉は当然伸びにくいです。ですのでその筋肉が伸びなくてはいけない動きがしにくくなる。そういう理屈で筋肉の”コリ”が四肢の可動域を制限していくことになるのです。

●”コリ”には気づきにくい?

縮むという能力しか持たない筋肉は自ら伸びることが出来ないため、外力によって引き伸ばさない限り、ずっとそのままになってしまいます。人間も本能的にそれを感じているため、体が固まったと感じたときには”伸び”をしますよね。犬も伸びをしますが、残念ながら犬の伸びの姿勢では実際に”コリ”になってしまっている筋肉を伸ばすことは出来ていません。これは実は人間にも言えることなのですが”たくさん使うことでこってしまう筋肉には自覚症状が出にくい”というルールがあるんです。

 例えば、歩くために使われる筋肉は、他の筋肉より多く、強く縮むので、コリになりやすいです。しかし歩くための筋肉がすぐに痛んでしまっては、次歩かなくてはいけない時に困ってしまいます。人間ならば肘や手を動かす筋肉も然りです。よく使うからこる。だけどそこが痛むようになってしまっては生活に支障が生じてしまうので、そういった”よく使う部位のコリ”は痛まないのです。だからコリが生じても、基本的にそれに気づくことはありません。
 なので私たちも犬も自分でコリに気が付いて負荷をかけないにすることや、そのコリを伸ばすようなケアをすることが出来ないのです。

●コリとハリ

前述の通り、一般的に犬のマッサージと言えば”背中を揉むもの”と理解している方が多いように見受けられます。実際、写真のような姿勢の子を見たら背中を揉みたくなる気持ちは分かります。実際、こういう姿勢の子の背中の筋肉は固いです。しかし背中が丸まっているからと言って、背中だけ揉んでも意味はありません。その分かりやすい事例を解説します。


 犬は大腿骨の裏側に後肢を後ろへ蹴りだす筋肉を持っています。

これは歩いたり走ったりする時に使う筋肉なので負荷も大きく、当然”コリ”になりやす部位なのですが、ここが縮んで固まったコリになると、付け根である坐骨が引っ張られてしまうのです。

こうして骨盤が後屈てしまうと、つられて腰椎が腹屈して背中は丸くなります。こうなると背中の筋肉は、引き伸ばされてしまった状態となります[イラスト10]。そして、そのままの状態で固まってしまった筋肉を私たちは”ハリ”と表現しています。背が丸まった子の背中の筋肉が固いのは”伸ばされて固まってしまった”からなのです。

この流れを踏まえた上で、”筋肉が自ら伸びることが出来ない”という理屈を考えれば、ば”ハリ”を緩めるためにはまず”コリ”をほぐさなくてはいけない。ということがが理解できると思います。


犬も背中の筋肉が伸びてしまった事がわかるのか、丸まって寝ていた後には、伸ばされていた背中の筋肉をたるませるように”背中を反る”伸びをするのです。しかし、本当にやらなくてはいけないことはモモの裏を伸ばすこと。なので、背中を反らせる伸びをしても事態が改善することはないのです。

まとめますと
〇筋肉がこり固まる状態には、縮んで固まっている”コリ”と伸びて固まっている”ハリ”がある。
〇筋肉は縮む能力しか持たないので、偏って使うと”コリ”が生じる。
〇コリの発生により骨格が歪み、その結果ハリが生じる。
〇骨格を整え、関節の可動域を回復するためには縮んで固まっているコリをほぐさなくてはいけない。
という流れになります。

●”コリ”はなぜ生じてしまうのか

使う筋肉が偏るとそこが縮で固まって”コリ”になってしまうのなら、使い方を偏らせなければいいのです。
ですが、残念ながら犬はどんな犬種のどんな体格の子でも、みんなほぼ必ずといっていいほど「コリ」を発生させてしまうんです。理由は“進行方向が決まっている”から。
当たり前のことですが、犬が歩く時「前にしか進まない」ですよね。感覚器が頭に付いていますので、あえてお尻方向にバックで進んでいく、という犬はいません。前に進むために、前に着いた足に体重をかけて後ろへ蹴りだします。次の一歩を踏み出すためまた足を前に引き出しますが、その際の動きは体重がかかっていません。

歩いている間ずっとこれを繰り返すわけですからほぼすべての犬は「足を後ろへ蹴りだす筋肉がこり固まってしまう」ことになるのです。

●コリを揉むとゆるむのはなぜか?

当方の手技では筋肉に指を差し込むことにより「筋反射」を引き起こして筋肉を緩めていきます。
筋肉は「軟部組織」というくらいなのでそもそもは柔軟性があるものなんですが動きが少なくなったり、使いすぎたりすると(もしくは加齢により)柔軟性を失います。事故により衝撃が加わった場合、筋肉や靭帯が柔らかければその衝撃を吸収することができますが、固まってしまっている場合、最悪断裂してしまい歩けなくなる。という可能性もないわけではないのです。
体は本能的にそのことを知っているので、こり固まった筋肉は揉むと激しく痛みます。当方の手技ではこの「痛み」の刺激を使って筋反射を引き起こしてコリを緩めています。まずコリに指を差し込み、コリの芯を刺激して痛みにより緊張を起こさせます。筋肉は緊張した後弛緩する、という反射を持っているのでその後刺激を受けた筋肉は弛緩するのです。それを繰り返すことでコリはほぐれていくのですが、そのコリに指差し込むため”揉む”と表現されていますが、施術する側の間隔では”揉む”より”刺す”に近い感覚ととらえています。
揉まれる側としてはコリに指を刺されて痛みを感じ、それに筋肉が勝手に反射を起こして緩んでいく、という流れになるので「コリの痛みを感じない場合は揉んでもほぐれることはありません」つまり、神経系の問題で間隔が麻痺してしまっていたり、施術自体を嫌がっていて筋肉が力んでしまっており”指が差し入れられない”といった状態では全く緩むことはありません。
逆に言えば、ほぐすべきコリをしっかり見極めてそこに刺激を入れられるなら、”指で揉む”じゃないくてもほぐれる。というわけです。

このアプローチなら、筋反射が起こる状態であれば”揉む”以外の手技でも確実に効果が発揮できます。しかし大事なポイントは”コリをほぐす”という事です。つまり、縮んで固まっている筋肉はどれかを見極める事が大事になります。姿勢の崩れや歩容の乱れをきちんと読み解いて、本当の原因となるコリを見つけるためには、筋骨格をしっかり理解する必要があります。次回は筋骨格の構造を踏まえて具体的な事例ついて解説していきたいと思います。

犬の整体でアプローチする「犬の動き」

前回に引き続き「犬の整体」が犬にどのような効果をもたらすのか、という解説をしていきます。今回は”具体的に、犬は度動いていて、どこの筋肉が使われているのか”という点にフォーカスしていきます。

●犬はどう歩いているか

犬は一般的に下記イラストのように四肢を使い歩いています。

犬の歩容で押さえておきたいポイントは以下の通りです。
〇肩甲骨は回転している
〇体重が乗っている間は肩関節、肘関節、膝関節は基本的に動かない。
〇推進力を生み出すのは股関節と足根関節。
〇後肢が推進力を産むので歩行時一番衝撃を受けるのは手根関節。

●歩容のポイント

以下、上記ポイントをひとつずつ解説していきます。

〇肩甲骨は回転します。

[動きの解説]
 犬の肩甲骨は骨格構造で胴体とつながってはいないので、胸郭の上を自由に動く事ができる構造になっています。その自由な動きは、筋肉により内転、外転、前引、後引、という四つの動きに分類されています。

このうち、内転、外転、は肩甲骨が上下に動く動きを指し、これらの筋肉は”肩甲骨を支える”働きや、ジャンプしたり、高いところからから飛び降りる時などに前肢にかかる衝撃を吸収するために働きます。


そして、犬の歩容を理解するためには残りの二つ、前引、後引の動きが重要になります。

筋肉の配置からいうと、肩甲骨の前引は肩甲骨が前にスライドし、後引は後ろのスライドする。ということになりますが、実際犬は歩く時このような肩甲骨の使い方はしていません。


実際には肩甲骨の上部と下部で逆方向に動き、肩甲骨を回転させるようにして歩いているのです。

歩行時の肩甲骨の使い方

〇体重がかかっている間は基本的に肩関節、肘関節、膝関節は動かさずに角度をキープする。

肩関節、肘関節、膝関節はそれぞれ、立位の状態から下のイラストのように動かすことは可能です。ですが、犬は歩行の際にはこれらの関節は使っていません。

歩行時に肩関節および肘関節の動きはない。
歩行時、体重がかかっている間は膝関節は屈曲していない。

 上の写真をご覧ください。体重が乗っている間、上記三つの関節が動いていないのが分かります。肩関節も肘関節も膝関節も、とての動きやす関節ではありますが、歩行時体重が乗っている間は、体重を支えるためにだけ働いているのです。

ただし、全力疾走になると最後に膝関節を伸展して地面を蹴り出す使い方をしています。

ただし、全力疾走になると最後に膝関節を伸展して地面を蹴り出す使い方をしています。

〇推進力を生み出すメインの関節は股関節と足根関節

犬の前足は体重を支える役割、後ろ足は推進力を生み出す役割を担っています。
 なので、しっかり歩くことができる子であれば、基本的に股関節の伸展、足根関節の底屈の動きで推進力を生み出すことになります。

推進力を生み出すのは股関節と足根関節

シニアになると楽な姿勢、楽な動きへ、と体の使い方が変わっていきますが、後肢の使い方は一般的に”股関節は使わずに足根関節に頼る”という形になっていきます。

〇移動時の衝撃は前肢に、それも一番地面に近い手根関節にかかる。
犬の進行方向感覚器のついている頭のある前側です。そのため、重心の移動による衝撃を吸収するのは常に前肢と決まっています。そして歩行によって生じる衝撃は前肢でも一番地面に近い手根関節に集中することになります。
手根関節はこの衝撃を吸収するために、他の関節より可動域が広くなっており、基本的に体重がかかると20度までの間で背屈できるようになっています。

●ゆがみの事例

〇肩甲骨が立つ

肩甲骨は回転して動きます。
前肢が前に出る際の動きは上部は後引、下部は後引。
前肢が後ろに蹴りだされる動きは上部は前引、下部は後引。となります。

そしてそれぞれの動きにはイラストにあるように、上部下部にそれぞれ前引、後引と二種類ずつの筋肉がかかわり、お互いに引っ張り合いながら肩甲骨を回転させているのです。

そして、犬の進行方向は必ず”頭側”ときまっているので、前から後ろへ蹴りだす際には体重を載せますが、後ろから前に引き出す動きの際は体重が乗っていません。そのため前から後ろへ蹴りだす動きの方が負荷が大きくなります。その結果後ろへ蹴りだす際に縮んで働く筋肉が縮んで固まったコリになりやすいのです。

そしてそれらがコリになると、肩甲骨は上部前引、下部後引の動きが苦手になり、前足が前に出にくくなります。
具体的な事例:首が上がらない。歩幅が狭い。肩を振っていざるように歩く。段差を嫌がる。前足が躓く。

〇骨盤の後屈

歩行時犬の股関節に関わる筋肉は主に股関節を屈曲させる前モモの筋肉と 股関節を伸展させるモモ裏の筋肉です。

犬の進行方向は”前”(頭側)と決まっているので、前から後ろへ蹴りだす際には体重を載せますが、後ろから前に引き出す動きの際は体重が乗っていません。そのため前から後ろへ蹴りだす動きの方が負荷が大きくなり、こちらの方が”コリ”になりやすくなります。

推進力に使っているモモの裏の筋肉がコリになると、股関節を屈曲させる際にこの筋肉が伸びにくくなるため、まずは”後肢が前に出しにくくなる”という変化が現れます。

しかし推進力を生み出すには”前から後ろに”蹴らなくてはいけません。
股関節が固くて後肢がしっかり前に出せない、となると、その状況で歩幅を確保するために”腰椎を動かすことで”後肢の歩幅を補おうとし始めます。

腰椎が横方向にぶれる場合は腰を振るため”モンローウォーク”と呼ばれたりもします。
この場合、腰椎が必要以上に動かなくてはいけなくなるため、腰椎を支える筋肉の柔軟性がなくなってくると一部位に動きが集中してしまい、結果ヘルニアなどの危険性が高まることになります。

腰が上下に振れる場合もあり、実はこちらの方がやっかいです。腰の上下の動きは、モモの裏の筋肉が股関節の屈曲のタイミングで、坐骨を引っ張ってしまうために起こります。

これはだいたい6~10歳頃に起こり始め、そのままシニア期に入るにつれ坐骨が下がった(骨盤後屈)状態で癖がついてしまうようになるのです。

〇膝が曲げにくい

犬の膝は体重がかかっている際には基本的に少し屈曲した状態になります。そして歩行時、後ろから前に引き出す際に膝を曲げます。膝を曲げないとつま先を地面に擦ってしまうので。
ですが、膝を伸ばしっぱなしでいる子をよく見かけます。小型犬の多いのですが、膝を曲げ伸ばしせずに歩くので”ツンツン歩き”や”ぴょんぴょん歩き”と表現される事が多いです。

この症状は膝蓋骨が脱臼しやすい状態になっている子に多く見られます。膝蓋骨は大腿骨の溝に反って滑りますが、この大腿骨の溝は、膝から離れるほど浅くなっています。

膝蓋骨は膝が伸展する際に膝から離れるように上に上がっていくので、膝が伸展していると膝蓋骨はより脱臼ししやすくなります。つまりパテラの問題を抱えている子ほど膝を曲げていた方がいいのです。
膝が曲げにくくなった際にほぐさなくてはいけない筋肉は”足根関節の底屈の筋肉”となります。なぜ膝の問題が足根関節の筋肉と関わるのか。それは膝関節屈曲と足根関節の背屈が連動するから。です。

犬が膝を曲げる際には、足根関節が背屈しなくてはいけないのです。しかし、この足根関節の底屈の筋肉は、前述の通り歩行時の推進力に使われている筋肉なのでコリになりやすい筋肉です。もしここがコリになっていると、足根関節の背屈が妨げられるので、つられて膝が曲げにくくなります。そしてここをほぐすと、膝を曲げてあるくようになるのです。

〇手根関節の過負荷

歩行時に一番の衝撃を受けているのは手根関節の底屈の筋肉です

この筋肉も、加齢とともに柔軟性を失っていきます。それでも立て歩いている以上、手根関節には必ず負荷がかかり続けます。そのままにしていて起こりうる不具合は
①手根関節が背屈(反る動き)しにくくなり、パッドを地面着けにくくなる(グリップできなくなる)。
②手根関節が背屈しすぎて手根関節自体が地面についてしまい、アスファルトなどの固い地面の場所が歩けなくなってしまう。2パターンになります。

①の事例
②の事例

●筋肉ができる動きは”縮む”だけど使い方は一つではない。
前号にて”筋肉の機能は縮むことだけ”、とお伝えしましたが、実際にはこの”縮む”という機能を三種類の使い方で活用し、体を動かしているのです。
筋肉の使い方一つ目
“縮む”です。これは筋肉が縮むことで、その筋肉が作用する作用する関節の角度が実際に動く。という使い方になります。具体的にいうと「歩く」「走る」「登る」「ジャンプする」「リードを引っ張る」などの動きになります。

筋肉の使い方二つ目
“長さが変わらない”という使い方です。一番分かりやすい事例は「立ち止まっている」です。この使い方だと、筋肉の長さの変化は無いのでその筋肉が作用する関節に実際の動きは生じません。なので「リードを引っ張られても踏ん張って動かない」や「お尻を上から押されてオスワリを促されているのに座らない」というような際にも、この使い方をされていることになります。
犬は人間と違って立っている際に膝をまっすぐに伸ばしてはいません。肘も適度に曲がっています。これは人間でいうと”空気椅子”の状態です。(前肢では”腕立て伏せの途中”といったところですね)空気椅子の姿勢で長時間立っていろ、と言われたら、すぐに疲れてしまうのがそうぞうできますよね。適度に曲がったままの関節を維持するのは大変なことなのです。
犬は常にこの姿勢で立っているため、立っているだけで肩、肘、股、膝、そして手根関節や足根関節(犬はつま先立ちなので)を支える筋肉に大きな負荷をかけているのです。

筋肉の使い方三つ目
“伸ばされる”という使い方になります。”伸びる”ではなく”伸ばされる”と受動態になっていることがポイントです。筋肉には”伸びる”という機能は無いのですが、外からの力に負けて”伸ばされる”ことはできるのです。そしてこの”伸ばされる”を意図的に行うのがこの使い方になります。外からかけられている力に負けてある筋肉が伸ばされる場合、その筋肉の作用とは逆方向に関節が動くことになります。
具体例でいうと「走ってきて止まる」や「階段を下る」「高いところから飛び降りる」などの際に使われることになります。
〚写真12〛〚写真13〛

●筋肉に一番負荷のかかる動きとは
上述の筋肉の三種類の使い方には、筋肉にかかる負荷の大小があります。三種の使い方を負荷の順に並べると、縮む<長さが変わらない<伸ばされる。となります。
つまり伸ばされる際に一番筋肉に負荷がかかるのです。
ではこの”伸ばされる”使い方の事例をさらに詳しく解説いたします。
〇オスワリやフセ
〇坂道をゆっくり下る
〇ブレーキ

●整体施術を依頼される事例
犬の整体のおきゃ貴様はやはりシニアの子が多いです。何も問題を抱えていなくても、シニアになれば筋肉は衰えやすくなるので。でも4割ほど若い子も通っています。若い子まだ普通に歩ける子が通ってい来る理由は様々で”過去に事故などにより骨折または靭帯を痛めていて、今後のためにケアをしておきたい”や”関節の形成不全を指摘されておる”また”先代の子が歩行困難になってしまったので予防したい”など様々です。
前号でも述べましたが、残念ながら歩けなくなってしまった子を歩けるようにできる手技ではありません。でも寝たきりの子の施術依頼が多いのも現実です。歩けるようになるわけでもないのに整体施術をする意味があるのか?という疑問に答える一つの事例を紹介します。
病気により右後肢を切断した4歳の子です。施術後背中の湾曲が改善下のが分かると思います。整体をしようと手術をしようと、この子の右後肢は戻ってきません。でも4歳のやんちゃな子です。この体でも目いっぱい走り回っています。そうして走り回っていると、当然右後肢の代わりに残された三本で歩くわけですからその姿勢に歪んでいきます。そして筋肉をほぐすだけでこんなに改善されるのです。
足が三本になってしまった事実は変わらないなら、三本で歩き続けられるようにサポートしてあげる必要がある。と私は思います。他の三本が過負荷で損傷してしまったら歩けなくなってしまうかもしれないので、、。
寝たきりの子の場合、寝返りが打ちやすくなる。や、首が上がりやすくなる。ふせの姿勢が撮りやすくなる。などの改善がある場合があるので、愛犬に何かしてあげたい飼い主さんの気持ちに答えるためにも施術依頼を受けているのです。

●おしまいに
“歩ける””自分で動ける”ということは、私たちにとっても犬にとっても等しくとても大切な事です。筋肉を揉む、という単純な手技でその機能を維持できるとしたら、とても素晴らしい事だと思います。そしてそれは誰にでもできるシンプルな手技で、実際に犬の姿勢や歩容を改善することができるのです。今後も、ぜひ多くの人にその事実を知ってもらえたら、と願っております。