○ 爪がねじれる

飼い主様が気になさっていたのは
後ろ足の爪が全部斜めに傾いていてそのまま歩いているようで、
斜めに削れてきてしまっている。

クーちゃん7

とのことでした。
そこでホック(人間でいう足の甲のあたり)を触ってみたところ
中足骨がねじれて固まっていました。

しかし実はこれ、指や足首の問題ではないんです。

犬の後ろ足は、後ろから見るとこんな風になっているものです。
骨盤から大腿骨、下腿、中足骨と、
まっすぐ降りて骨盤と大たい骨の関節の下に、
パッドがくるようになっています
クーちゃん5

ですがCちゃんの足はこのように

クーちゃん6
膝が開いてしまっていました。

膝が開いたために、膝から下は逆に
ぐっと内側に入り、その結果ホックがねじれて
地面に着くような形になってしまっていたのです。

要するに根本的な問題は、
股関節の角度(膝が開いてしまっていること)なのです。

○ なぜ膝が開いてしまったのか

残念ながら、私はCちゃんの
小さい頃の状態を知らないし
レントゲン画像を見たわけでもないので、

膝Cちゃん関節や股関節が本当にずれているのかは分かりません。

ただ、大切なことは
現在Cちゃんの足の関節はどれもちゃんと動いている。
ということ
そして足を着いても痛がるそぶりを見せないこと
さらに股関節や膝に腫れもなく、
触っても痛がらないところから見ると

もし過去に関節に問題があったとしても、今は問題ない。
ということが言えます

(逆に骨に異常があっても
幼い頃手術を避けた経緯を考えるとこの年で手術、
という選択肢は薄いと思います)

そこでCちゃんの後ろ足の筋肉の状態を調べると
前モモの筋肉が衰え、スジ状になっていること。
そしてモモの内側によく使われているらしき筋肉がある。
と言うことがわかりました。

前モモには、足を前に引き出す動き。
そして大半は膝を伸ばす動きに働く筋肉が存在しています。

クーちゃん14
クーちゃん15

前モモ・膝を伸ばす=立ち上がる。です

ココが衰えてしまったために
内モモにある
”膝を伸ばす=立ち上がる筋肉”
クーちゃん16クーちゃん17

に頼っている。
というのが今のCちゃんの状態でした。

ここでひとつ解説します。

後ろ足の骨格

前述の通り、後ろ足の骨格を後ろから見ると

クーちゃん8

こんな風に、
股関節、膝、足首がほぼまっすぐ下に下りて
股関節の下にパッドが来るのが理想の姿勢です

内モモの力で立ち上がろうとする子は
Cちゃんのように膝が開くか

クーちゃん6

もしくはこのように閉じてしまう傾向があります。

クーちゃん9

この二種類の姿勢は、どちらも
“内モモが伸ばされている”状態です。

クーちゃん10

ボールを遠くに投げようと思うとき
皆さん振りかぶりますよね?

筋肉は縮んで力を発揮するものなので
その筋肉に頼ろうと思う時、
無意識にその筋肉を引き伸ばそうとするんです。

犬も同じで、
内モモに頼りたいがために、
内モモの筋肉が引き伸ばされる位置に膝をもっていくんですね。

こうして膝の位置がずれても
パッドは股関節の下にいないとバランスが悪いので
足首が無理にひねって、股関節下にねじ込まれます。

クーちゃん11

その結果ホック(足の甲の部分)がねじれて
爪が斜めにねじれてしまうんです。

言葉の伝わらないワンちゃんでも
体の変化のサインはいろいろな形で出ています

声にならないワンちゃんの声をぜひくみとってあげてください。